- ロシア・ウクライナ戦争の「準備期」に、MSCI ACWIの旗艦指数5本は大きく低迷したものの、「戦争継続期」には戦争の悪影響は軽減されました。
- 大きく足を引っ張ったのは、バリュー株のアウトパフォームとエネルギーや航空宇宙・防衛セクターへの低配分でした。MSCI ESG格付けの平均値より高い銘柄や、炭素効率に取り組む銘柄、低リスク銘柄への配分はプラスの寄与となりました。
- 過去の調査期間において、各種MSCI ACWI ESG指数はMSCI ACWI指数をアウトパフォームしています。これらの指数は、MSCI ESG格付けの向上や、一部の指数では価値観に基づく整合性の確保を目指しています。
投資家がESGソリューションの構築を目指す中、ESGへの配慮を重視する動きは続いています。各ESGソリューションが異なる中、リスクやリターンの水準は多様化しており、ロシア・ウクライナ戦争など予想外の出来事の影響も受けています。ESG投資の環境は絶えず進化を遂げているため、投資家は、特に関心を持つ主要な属性や指標に焦点を当ててポートフォリオを管理した方がよいかもしれません。
2022年上期パフォーマンスの詳細
過去3年および5年の期間で、各種MSCI ACWI ESG指数はMSCI ACWI指数をアウトパフォームしていますが、下表のとおり、7月29日までの年初来および 過去1年間 ではアンダーパフォームしています。
指数の相対パフォーマンス
期間が1年を超える場合、リターン値を年率換算しています。2022年7月29日までの期間のグロスリターン。
2022年上期には、金融市場の地政学的リスクとマクロ経済的リスクが増大しました。私たちの見解では、2月24日のロシア・ウクライナ戦争の勃発を受けて、 MSCI ACWI ESG指数5本のパフォーマンスは2つの別個の要因から説明することができます。
MSCI ACWI ESG指数5本の年初来パフォーマンス
各種MSCI ESG指数のMSCI ACWI指数比での相対的なパフォーマンス(2021年12月31日を基準値100に設定)。2021年12月31日から2022年7月29日までのデータ。
下表のとおり、ロシア・ウクライナ戦争が勃発する前の「準備期」(1月1日~2月23日)において、石油やガス価格の上昇、そして 安価な株式銘柄に追い風となるマクロ経済環境を受けて、各種MSCI ACWI ESG指数のパフォーマンスは低迷しました。戦争継続期のパフォーマンスも詳しく記載していますが、ボラティリティは小さくなっています。
MSCI ACWI ESG指数におけるアクティブファクター別のリターン属性
ロシア・ウクライナ戦争の準備期および戦争継続期における各種MSCI ACWI ESG指数におけるアクティブファクター別のリターン属性。2021年12月31日~2022年7月29日。
石油価格が急騰した年初を中心にエネルギー株のリターンは高水準を記録し、経済はパンデミックのロックダウンから回復しつつありました。同様に、航空宇宙銘柄と防衛銘柄は、ロシア・ウクライナ戦争関連の防衛機器需要への期待感を背景に良好なスタートを切りました。MSCI ACWIのESG指数5本はアクティブセクターウェイトが大きくならないように組成されていますが、短期的に相場が荒れた時期には小さなアクティブセクターエクスポージャーもリターンに大きく寄与する可能性があります。今年、各種MSCI ESG指数内のエネルギーや航空宇宙・防衛セクターのアクティブウェイトは、これらの指数の価値観やインテグレーション整合性を反映して低位であり、当該セクターが良好なリターンを計上した影響で、各種ESG指数のアクティブパフォーマンスに対するこうしたポジションの寄与は大幅なマイナスとなりました。
業界別パフォーマンス
上半期のパフォーマンス下押し要因
私たちは以前に、 高ESG格付け企業は株価水準が高く、銘柄固有のボラティリティは低く、システマティックリスクも低くなりやすい、と説明しました。したがって、バリュー株の低ウェイト構成が各種MSCI ACWI ESG指数がアンダーパフォームした大きな要因であり、戦争の準備期には多大な向かい風となりました。一方、戦争継続期には、欧州でガス不足の問題が浮上し、各セクター内の炭素効率に優れた銘柄へのオーバーウェイトが各種ESG指数のパフォーマンスへプラスに寄与しました。MSCI ESG格付けが平均を上回る銘柄と低リスクの銘柄もまた、MSCI ACWI SRI指数の持ち直し、そして他のMSCI ACWI ESG指数のアンダーパフォームの軽減に大きく貢献しました。1
ロシア・ウクライナ戦争期間の各種ファクター
2021年12月31日から2022年2月23日までの準備期、および2022年2月23日から同7月29日までの戦争継続期のデータ。
ESG格付けの目標達成
MSCI ACWI ESGスクリーニング指数は価値観に基づく除外スクリーニングを行い、残りの銘柄にスクリーニング前と同じ割合で資金を再配分しています。他のESG指数は銘柄の選定およびウェイト付けにMSCI ESG格付けを採用し、親指数よりもESGスコアの大幅な改善を見込んでいます(下表参照)。MSCI ACWI ESGスクリーニング指数はMSCI ESG格付けを採用していないため、親指数と同様の総合ESGスコアとなっています。他のMSCI ACWI ESG指数4本は調査期間中に親指数より高いMSCI ESGスコアを示しており、組成の目的に合致しています。これらのACWI ESG指数4本の各ESGピラースコアも改善しています。
ESGスコアの相対的な改善度合い
2021年12月31日~2022年6月30日。
上期のパフォーマンスおよびESGの効用
旗艦MSCI ACWI ESG指数5本にとって、エネルギー銘柄や防衛銘柄の持ち直し、さらにロシア・ウクライナ戦争の準備期のバリュー銘柄のアウトパフォームはマイナスに働きました。しかし、戦争継続期に入った後は、高ESG格付け銘柄、炭素効率の高い銘柄、および低リスク銘柄がパフォーマンスの向上に寄与しました。
1GEMLTESGモデルの炭素効率ファクターは、現金を含む企業価値比で、スコープ1、2、3に該当する排出量の集約度に基づいて算出されています。個別銘柄のプラス(マイナス)のエクスポージャーは、同銘柄がセクター内の競合他社に比べて炭素集約度が低い(高い)ことを示しています。
その他の参考文献:
Breaking Down the Direct Indexing Investment Process
Value and Growth Investing as ESG and Climate Friendly - MSCI