- 2021年に石油・ガス価格が反発しましたが、主要なMSCI ACWI ESG指数においては、石油・ガス銘柄のウェイトが低いことによるパフォーマンス悪化はわずかでした。
- 各産業はESG指数のパフォーマンスに大きな影響を与えませんでした。
- 2021年にMSCI ESG指数のアクティブリターンに最も寄与したのは銘柄固有のリターンでした。
石油・ガス銘柄は5年間にわたり低調なパフォーマンスが続いていましたが、2021年に反発しました。一方、主要なMSCI ESG指数は、石油・ガスなど二酸化炭素排出量の多い産業のウェイトが全般的に低いにもかかわらず、2021年に優れたレジリエンスを示しました。市場環境が大幅に変化する中でも、 2年連続で親指数のMSCI ACWI指数をアウトパフォームしています。本ブログ記事では、産業全般および銘柄選択が2021年の指数パフォーマンスにどのように貢献したかを考察します。
MSCI ESG指数のパフォーマンスとMSCI ACWI指数の比較
2020年12月31日から2022年1月2日までのデータ。
MSCI ACWI指数とESG指数のパフォーマンス
石油・ガスの影響を、半導体、旅客航空輸送業、航空宇宙・防衛が相殺
各種のMSCI ESG指数は、様々な投資家の目的に合致するように設計されており、幅広いESG目標や財務目標の達成に貢献します1。
上図に示した5つのESG指数では、石油・ガス・消耗燃料2産業のウェイトが親指数よりも低くなっており、2021年には平均-0.92%でした。最低値はMSCI ACWI SRI指数で、-2.41%となりました。MSCI ESG指数は、セクター全体を除外する手法ではなく、同業他社よりもESG格付けの高い企業を組み入れるセクター包含的手法を採用しています3。このセクター包含的手法により、指数リターンに対する個別セクターの影響を緩和します4。
MSCI ACWI指数における石油・ガス・消耗燃料産業のウェイトは、2021年には3.4%でした。ESG指数においては、どのセクターについても、親指数に対する大きなオーバーエクスポージャーまたはアンダーエクスポージャーはありませんでした。例えば、ESG指数の親指数に対するアクティブセクターウェイトには幅がありましたが、コミュニケーション・サービスの-1.08%から情報技術の1.3%までの範囲に収まっています。
このようなウェイトの低さが2021年におけるMSCI ESG指数のアクティブリターンにどの程度影響したかを検証するために、MSCIの バーラ・グローバル株式トータルマーケットモデル(ESGファクターあり)(GEM+ESG)5 を用いてファクターパフォーマンス寄与を調べました。
2021年、MSCI ACWI ESG指数の平均アクティブリターンは1.81%でしたが、インダストリーファクターの平均アクティブリターンは-0.23%というわずかな値となりました。石油・ガス・消耗燃料産業に起因するアクティブリターンも小さく、-0.61%から-0.09%の範囲に収まっています。
主要なMSCI ACWI ESG指数では、アウトパフォームした半導体のウェイトが親指数より高く、アンダーパフォームした旅客航空輸送業、航空宇宙・防衛のウェイトが低かったため、2021年に石油・ガス・消耗燃料に対するエクスポージャーが低かったことによる損失のほぼすべてを、これらのエクスポージャーで埋め合わせることができました(下図参照)。
GEM+ESGインダストリーファクターのアクティブリターンへの寄与
2020年12月31日から2022年1月2日までのデータ。
アクティブリターンに最も寄与したのは銘柄選択
さらに重要な点として、2021年のMSCI ACWI ESG指数のパフォーマンスを高めた主な要因は銘柄選択でした(下図参照)。コロナ禍により日常生活は大きく変化し、消費者の需要、サプライチェーン、労働者の生産性に著しい変化をもたらしました。そのような新しいトレンドに対応できた企業は、2021年に良好なパフォーマンスを達成しました。
MSCI ACWI ESG指数におけるファクター別のアクティブリターン寄与
2020年12月31日から2022年1月2日までのデータ。
この5指数について、2021年にアクティブ・スペシフィック・リターンへの寄与度(資産のリターンのうちシステマティックなファクターで説明できない程度)が高かった上位10銘柄をリストアップしました。
ESG指数においてアクティブ・スペシフィック・リターンに最も寄与した上位10銘柄
上表は各銘柄のESG格付け一覧と、格付けが改善(*)したか低下(°)したかを示しています。 MSCI ESG格付けのメソドロジーについては、「MSCIのESG格付けについて」で説明しています。当社は、前回の格付け見直し以降にESG格付けが改善した銘柄について、ポジティブトレンドと見なしています。格付けが低下している場合はネガティブトレンドです。詳細については、「MSCI ESG投資、より良い世界のためのより良い投資」をご覧ください。2020年12月31日から2022年1月2日までのデータ。
2021年にESG指数のパフォーマンスを高めた要因とは?
石油・ガス銘柄のバリュエーションは、ESG指数のパフォーマンスに大きな影響を与えませんでした。その理由の一部は、指数の設計にあります。つまり、セクター包含的手法により、パフォーマンスに対するセクターの影響を最小化したことが一因です。2021年にパフォーマンス向上に寄与したのは、主に銘柄固有のリターンであり、その次がESGファクターも含むスタイルファクターでした。マクロ経済環境の変化を考慮すると、 2022年の市場動向 や、どのような資産特性が企業のレジリエンスに寄与するかについては、予断を許さない状況です。
1See MSCI ESG Indexes for methodology and MSCI ESG Investing, Better investments for a better world for ESG investing principals. Exhibit 1 shows a summary of construction rules of Indexes in our study, their concentration and ESG score improvement over the parent index.
2As defined by the Global Industry Classification System (GICS®), which was jointly developed by MSCI and S&P Global Market Intelligence. Each sector contains a number of industries; ESG ratings are industry-adjusted. For more details see MSCI ESG Indexes and What is an MSCI ESG Rating?
3Each sector, as defined by GICS, contain a number of industries, ESG ratings are industry-adjusted. For more detail, see MSCI ESG Indexes and What is an MSCI ESG Rating?
4There had been no significant active industry weights for all ESG Indexes, which is in line with sector-inclusive ESG Index methodology and industry-adjusted methodology of ESG ratings.
5We use MSCI’s Barra Global Equity Total Market Model with ESG factor, which builds on MSCI’s Barra Global Equity Total Market Model methodology and allows us to measure portfolio exposure to the ESG factor. This factor is based on MSCI ESG Ratings and assigns higher ESG exposure to stocks with higher MSCI ESG Ratings.
その他の参考文献
Understanding MSCI ESG Indexes