- 第3四半期に各種MSCI ACWI気候指数は、MSCI ACWI指数比でまちまちのパフォーマンスとなったものの、第2四半期より高いレジリエンスを発揮しました。
- エネルギー銘柄の相対的なアウトパフォームが各種気候指数におけるアンダーパフォームの大きな要因となりましたが、各セクター内の炭素効率型企業がプラスのリターンに寄与しました。
- エネルギーセクター内では、低炭素移行リスクの管理が強固な銘柄は競合他社をアウトパフォームし、同リスク管理の重要性が浮き彫りになりました。
第3四半期も、高水準の石油価格が引き続き世界的に話題をさらいました。しかし、第3四半期には、各種MSCI気候指数1 (今までエネルギー銘柄への配分は低位)が第2四半期より高いレジリエンスを見せました。投資家の間で重要な問いとなるのは、気候分野でMSCI ACWIの親指数にどの程度近いウェイト付けを採用するかでしょう。
第3四半期において、MSCI ACWIエネルギー指数に代表されるエネルギーセクターは、MSCI ACWIを5.43%アウトパフォームしました。しかし、この四半期の各種MSCI気候指数のパフォーマンスは各指数の異なる運用手法を反映した結果です。
たとえば、MSCI ACWI気候変動指数とMSCI ACWI気候パリ協定準拠指数はエネルギー銘柄を大幅にアンダーウェイト(下図参照)した結果、MSCI ACWI比でマイナスの影響を受けています。過去を振り返れば、(ロシア・ウクライナ戦争のような)高ボラティリティの時期に、高いトラッキングエラーが見られます。
それとは対照的に、MSCI ACWI低炭素リーダーズ指数とMSCI ACWI低炭素ターゲット指数(総称して「各種低炭素指数」と呼びます)はセクター別のエクスポージャーを厳格に管理し、他の気候指数よりもエネルギーセクターへのアンダーウェイトを小幅に留めています。その結果、過去の期間において、親指数であるMSCI ACWI指数に対して相対的に近いパフォーマンスとなっています。第3四半期に、MSCI ACWI低炭素リーダーズ指数はMSCI ACWI指数を0.06%アウトパフォームし、一方でMSCI ACWI低炭素ターゲット指数は0.18%アンダーパフォームしました。
各種MSCI ACWI気候指数のエネルギーセクターへのアクティブ配分
各種MSCI ACWI気候指数間におけるエネルギーセクターへの配分の差異(MSCI ACWI指数比)。アクティブな配分とは、2022年6月30日時点におけるエネルギーセクターへのオーバーウェイト/アンダーウェイトを示しています。
短期と長期のパフォーマンス比較
下表は各種MSCI ACWI指数の短期および長期のパフォーマンスを示しています。MSCI ACWIの気候変動指数および気候パリ協定準拠指数は長期的にMSCI ACWI指数をアウトパフォームしていますが、第2四半期にはMSCI ACWI指数をアンダーパフォームしました。この短期的なアンダーパフォームは第3四半期も続きましたが、 その度合いは小さくなっています。
各種MSCI ACWI気候指数のアクティブリターン
アクティブリターンとは、各気候指数とその親指数であるMSCI ACWI指数との差異を示しています。2022年9月30日までの期間のグロスリターン。長期リターンは、2013年11月29日から2022年9月30日までの期間で測定しています。期間が1年を超える場合、リターン値を年率換算しています。
セクターおよび業界別の詳細な分析
第3四半期も、業界別の配分、とりわけ石油関連業界(統合型の石油・ガス、石油・ガス、消費型の燃料、および石油・ガスの探鉱/開発を含む)へのアンダーウェイトは、特にMSCI ACWI気候変動指数およびMSCI ACWI気候パリ協定準拠指数において、大きな役割を果たしました。第3四半期には、このアンダーウェイトの影響で、MSCI ACWI気候変動指数は19ベーシスポイント、MSCI ACWI気候パリ協定準拠指数は21ベーシスポイントのアンダーパフォームとなりました(下表参照)。予想どおり、低炭素指数において、石油関連業界への配分は、はるかに小さな影響に留まりました。
MSCI ACWI気候変動指数は米国への配分が相対的に大きいため、直近期のドル高は通貨ファクターでプラスに作用しました。しかし、その効果も中国へのオーバーウェイトで相殺されています。
MSCI ACWI気候指数は、広範なMSCI ACWI指数よりも低いカーボンフットプリントの達成を目指しています。各セクター内の炭素効率型企業の選定は4本の指数すべてで功を奏し、今年上期と同様の結果となりました。
各種気候指数のパフォーマンス属性
上表は、MSCIグローバル株式モデル(GEMLT)を用いたパフォーマンス属性に基づいて、共通ファクターの寄与度を示しています。2022年6月30日から2022年9月30日までの月次データ。
*統合型の石油・ガス、石油・ガス、消費型の燃料、および石油・ガスの探鉱/開発業界に関するファクターを含みます。
エネルギー銘柄の低炭素移行リスク管理
第3四半期にエネルギーセクターはMSCI ACWI指数をアウトパフォームしましたが、すべてのエネルギー企業が低炭素環境への移行に向けて効率的にエネルギーを活用しているわけではないでしょう。MSCI ACWIエネルギー指数内でLCT(低炭素移行)リスク管理スコアの高い第1および第2分位数に属する「LCTリスク管理の水準が平均を上回る企業」を対象に、LCTリスク管理 スコアの低い「LCTリスク管理の水準が平均を下回る企業」(第3および第4分位数の企業)とのパフォーマンスと比較しました。当四半期において、LCTリスク管理の水準が平均を上回る企業のパフォーマンスは-0.76%でしたが、平均を下回る企業は-5.69%でした(下図参照)。
エネルギー企業のパフォーマンス
LCTリスク管理が平均を上回る/下回る企業の累積リターン。2022年6月30日から2022年9月30日。
総括:まちまちの結果
第3四半期において、各種MSCI ACWI気候指数のパフォーマンスはまちまちでした。MSCI ACWI低炭素リーダーズ指数がMSCI ACWI指数をアウトパフォームした一方で、他のすべてのACWI気候指数はアンダーパフォームしました。とはいえ、そのアンダーパフォームの度合いは前四半期より小幅です。各種低炭素指数の厳格なセクター配分が功を奏し、エネルギーセクターのアウトパフォームの影響を軽減しました。各セクター内の炭素効率型企業への配分も各種気候指数のパフォーマンスにプラスに働きました。エネルギー株のアウトパフォームは、各種ACWI気候指数の下押し要因にはなりましたが、気候リスク管理の優れたエネルギー企業は競合他社をアウトパフォームしています。
1本ブログでは、MSCI ACWI低炭素ターゲット指数、MSCI ACWI低炭素リーダーズ指数、MSCI ACWI気候変動指数、およびMSCI ACWI気候パリ協定準拠指数を総称して、各種MSCI ACWI気候指数と呼びます。
2スコア結果は、炭素排出量、製品のカーボンフットプリント、資金調達の環境インパクト、再生可能エネルギーの機会、およびクリーン技術の機会に基づいています。